職人紹介
中村 浩
節句人形工芸士
羽子板の要である顔を描く『面相師』として二十年以上の経歴を持つ。張り詰めた緊張と穏やかな緩和を繰り返す繊細な筆さばきで、ふんわりとした愛らしさと気品をまとう表情を生み出す。まるで生身の人間に化粧を施すかのように心を込めた表現が見る者を惹きつける。熟練した経験におごることなく、新たな発想を取り入れながら進化し、故郷である八女の地から創意あふれる作品を世に送り続けている。
[2008年 内閣総理大臣特別賞]
[2016年 節句人形工芸士認定]

京友禅の図案・下絵作成の経験を経て、
羽子板の面相師(顔を描く職人)として活躍する中村。
型破りな羽子板を作りたいと、新しい表現を模索する中村に、
面相の魅力や制作にかける思いを聞いた。
面相の奥深さ
「以前は、京都の呉服製造の会社に勤めていて、京友禅の図案や下絵作成などを担当していたのですが、その後地元の八女に戻ってきました。京友禅の経験も生かせる、絵を描く仕事がないかと思っていたところ、羽子板の面相師のお話をいただき、挑戦することになったんです。
面相描きを始めて20年以上も経ちますが、この年になってもまだまだ勉強中だなと感じます。特に目の表現が難しくて、描く線のほんの少しの違いでお顔の表情がガラッと変わるので、奥が深く、面白い世界だなと思います」





八女の自然を活力に
「面相描きは細かい作業ばかりなので、たまに窓の外に広がる自然の景色に目を向けて、ゆっくり休むようにしています。特に、屋上から山の風景を見渡すのが好きですね。疲れていたり、気分が優れない時でも、八女の自然豊かな景色を眺めると、心も体も癒されて、仕事にも弾みがでるんです」





型破りな
新しい羽子板を
「思うように筆が進まずに悩むこともありますが、面相描きの実演をした際に『心が洗われるようですね』と、お客様から嬉しいお言葉をいただいたり、手がけた商品が売り場に綺麗に並んでいる様子を見たりすると、この仕事を続けてきて良かったなと励まされます。これからは、現代風な表現も取り入れて、新しい、型破りな羽子板づくりにも挑戦してみたいなと思っています」